騒がしい未来

無駄に元気な毎日を送っている、チームラボ所属 高須正和のブログです。最近はtwitterメインで更新中

地下鉄(メトãƒ)に乗って

 何かを訴えるための小説ではない。時事ねたを扱ったり、特定の世相を反映したものでもない-あらすじを説明するのは難しい。ハッピーエンドなのかバッドエンドなのかも判然としない。
 ひたすら、地下鉄を舞台にタイムスリップして自分の父の過去を覗く、その風景の情景乗車だけが続く。心理描写も少ない。内面を紹介するものがない、という意味では本当に映画的、視覚的な小説。
 まるで色がついたように、絵に描いたように、目の前に小説の世界が開ける。ぐいぐいと引っ張り込まれる。その中の生活に、その中の風景に。圧倒的な筆力、小説技巧。

 あっという間に読み終わるまで、ため息も出なかった。浅田次郎を初めて読んだのは今年になってからだが、これはすごい小説家だ!優れた音楽が、歌詞の内容がわからなくても「何か」が伝わってくるように、この小説からも「何か」が、小説技巧のさらに奥からぐいぐい伝わってくる。多分、それは浅田次郎の小説全体(まだ10冊ぐらいしか読んでないけど)に共通する、「精一杯生きるものたちのすばらしさと、どの人生にもある喜怒哀楽、そしてその人生への愛情」だと思う。まさにブルースだ。若いころに散々やんちゃをして甲羅を経て、思い入れいっぱいにそれを歌い上げるブルーズマンの唄。

ひとりとひとりが 出会うこの街 ヘソの緒切れたときに すでに孤独さ
笑った分だけ 涙なんて落ちる
 涙がたまれば海になる

 踊ってゆこう 何もホラ逃げないから
 そしてブラッと行こう 地平線はそこにあるから
              (ホライズン・マーチ ソウル・フラワー・ユニオン)

No Comments :(

 
携帯アクセス解析