正月休みに読了。
日経BP社 (2007/06/07)
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ひさびさのヘビー級本。難しいわけでも読みにくいわけでもないが、なにしろ内容が多岐にわたる500ページ近くの本。どっちかというと一度読んで全体を把握し、その後レファレンス的に何回か読み直すような使い方の本ではないだろうか。
2007年のネット界を考える中で外せない本であることはすでにさまざまなブログで取り上げられているが、どこが本書を「外せない本」と評される要因となったのか。
この2つの要因だと思う。
- すでにバズワードになりつつあるweb2.0のうち、「集合知」を実際にやった事例が集まっている。
それも、”単にwebのコンテンツを増やす”,”サイトのトラフィックをあげる”なんていう事例でなく、飛行機の開発や鉱山の金鉱発見のようなリアルビジネスでの実例が掲載されている。 - 広く深い取材/インタビュー
本書は章ごとに、トピックとそれが実現された実例、という形で書かれている。
第1章 ウィキノミクス
全章のまとめとして、集合知の利用としてのウィキノミクスという考え方の紹介、ウィキノミクスを構成する要素としての四本柱「オープン性」、「ピアリング」、「共有」、「グローバルな行動」の4つ
実例
ゴールドコープ社の金鉱発見第2章 嵐の中の嵐
技術の進化、価値観の進化により、価値は共同で作られていくようになった。集合知としてのウェブサイトと、新世代の考え方
実例
さまざまなweb2.0系サイト第3章 ピア開拓者
ピアプロダクション(個人の自発的な集まりによる共同開発)とはどういうもので、どういう考え方・人によって構成されていくか
実例
IBMのオープンソースへの取り組み第4章 アイデアゴラ
従来社内で研究していた、研究開発のアイデアを、アイデアそのものに価格をつける形で、オープンに市場から調達する試み
実例
P&Gの新薬開発、イェットツー・コムといったアイデア市場第5章 プロシューマー
自社製品の仕様をオープンして、顧客による改変を認めて確信していく試み。また、そのためのライセンス形態としてクリエイティブ・コモンズなど。
実例
リンデンラボ(セカンドライフ)、レゴ第6章 新アレクサンドリア人
知識・研究成果の共有により研究の生産性を劇的にアップさせる動き。
実例
ゲノム解析プロジェクト、インテルのオープン・ユニバーシティ・ネットワーク第7章 参加のプラットフォーム
マッシュアップなどにより、簡単にサービスのスタートアップができるようになり、多くの実用的なサービスが登場している動き
実例
ピープルファインダー(ハリケーン被害者のネットワーク)等のマッシュアップサイト、アマゾン等の仕様公開サービス第8章 世界工場
仕様を詳細に決めて発注していたこれまでの開発に対し、開発元は大まかな目標策定とマネージに徹し、各社のコラボで製品開発を行う動き
実例
ボーイング社の787開発の試み、中国・力帆の自動車開発第9章 ウィキワークプレイス
「ウィキノミクス」的な働き方を支えるための社内風土、ツール
実例
ギーク・スクワッド(PCサポートサービス)の運営方法第10章 コラボレーションの精神
「ウィキノミクス」的なプロジェクトを行う際のまとめ、予想されるトラブルなど
それぞれの事例の中で、いくつかすでに古くなってしまったもの、例としては怪しいものもある。読んだ人どおしで話し合っていても、「第8章 世界工場」で挙げられているボーイング・力帆とも、成功例としては微妙(出版後、どちらも商売が怪しい)という指摘が出た。
それでも、個人が検索していては到底たどり着けない、「さまざまな国・商売での”web2.0っぽいもの”を収集し解説したもの」として、この本の価値は大きい。webサイトだけでは見れない、サイトの裏側のお金の回り方まで書いてあるし、そもそもwebとはほとんど関係のないものが多く含まれている。「オープン性」、「ピアリング」、「共有」、「グローバルな行動」という4つの概念についても、自分自身の実例で類推できる程度には、しっかり説明されている。
梅田本に近いような2.0マンセー臭はあり、できれば「ウィキノミクス失敗の事例」的なものが今後整理されてこないと、内容を丸呑みするのは危険ではあるが、それでも「どうやれば共有できる・できそうだ」「ピアリングできる・できそうだ」といったものはつかめる。
既存のサービス・ビジネスに対して、「ウィキノミクスの要素を取り入れて効果を上げることはできないか」を考えるケーススタディとして、何かビジネスのネタを考える際にはたびたび読み返すことになる本だと思う。
