雨と、ちょっと体調が悪くて週末は引きこもって、小説を何冊か読んでいた。
この「チューバはうたう」は大当たり! 3つの短編が収められた小説なのだけど、どれもすばらしい。
すがすがしく、開放的で、旅に出たくなったり、自分の部屋が何かすばらしいもののように思える小説だ。
3作とも、どこにでもいる、ちょっと変わった趣味(チューバ吹き、南洋放浪、プラネタリウム作り、自転車での廃線歩き、トラックに蜂を積んで自然の花を探すフリーの養蜂家…)の人々の生活と、生活の中で起こるちょっとドラマティックな出来事を活写している。
世の中のメインストリームから、ちょっと違ったスタンスに立っているからこそ見える、「あたりまえ」のばかばかしさ。高校オーケストラ部員の「練習が自己目的化したような日々」を、主人公は評価しない。でも、自分が荒川の河原で一人チューバを吹く日々も快いとは思っていない。シニックに世の中を批評して得意がる小説、ではないのだ。
むしろ、ちょっとはずれた、普通には選ばない趣味・職業・価値観の持ち主がいろいろ考えつつ、吸い寄せられるようにその人生の道に流れ、ハマっていく(なんとなく、では行けない道なので、ハマらざるをえない)課程と、打ち込むものを見つけた人生の素晴らしさが、どの小説にもあふれている。青春小説にありがちな、若い人ばかりが主人公でないのもいいし、湿っぽさがない、ドライで明快な文体もいい。文中に活写される、自分が愛してやまないバルカンのダンスミュージックのように、人生のブルースがすべて祝祭のように聞こえる、泥臭くて華やかな文章!
チューバを描いた表題作では猛烈にブラスを聴きたくなり、続けて何枚もCDをかけてしまった。
音楽好きにも、そうでない人にもおすすめだけど、ファンフォーレ・チョカリーアとか、タラフ・トゥ・ハイドゥークスといったバルカンの音楽や、そこと近い音楽をやっているソウル・フラワー・ユニオン、渋さ知らズ、「チューバをうたう」が捧げられているシカラムータの音楽が好きな人には特にお勧め。
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